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  • 執筆者の写真卯之 はな

本ではよくあるお別れ会


※短編としてお読みいただくことができますが、「クランク イン」もご覧いただくとより楽しめる作品となっています。



わたしがこの場を借りて書くのは、おかしいかもしれない。


彼より文才もないし、想像力もない。

ただの"登場人物"だから…。


今日はようやく、複雑な人間模様に終止符が打たれた。

完結を迎えたのだ。


愛した主人公と、

いがみあっていた友だち、

わたしを支えてくれた両親、

そのひとたちとの演劇をやめなければいけない。


あぁ、存在は消えてしまうのか。


主人公とは、幼馴染という設定だった。

彼が、わたしに言う。


「おつかれさま。 今度会うときは…お互いおとなになっているかな」


「作者の彼が望めば、会えるよ」


そう言って、彼と別れた。

わたしは思った…すこし、さみしい。 

こんな感情でさえも、彼の脳内で育てられたものなのだろうか?


次に、わたしから友だちに声をかけた。


「あんなにひどいことをしてごめんね」


「わたしのほうこそ。 最後まで、仲直りできなかったのが残念」


笑みを交わして、彼女と別れた。

わたしは思った…親友に、なりたかったな。


そして、両親とも会った。 

一番言いたかった言葉を作中で書かれなかったので、

第一声はもう決まっていた。


「生んでくれて、ありがとう」


お母さんとお父さんは、やさしく抱きしめてくれた。

わたしは思った…

泣くときがあれば、こうやってまた抱きしめてください。




わたしたちのものがたりは、これでおしまい。

作者のあとがきのように余韻を残す間もなく、

終わりを迎える。


この作品を、駄作と思われようと関係ない。

わたしたち"登場人物"が、精一杯生きた証なのだから。


たとえ、本の中だとしても…


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