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  • 執筆者の写真卯之 はな

白ひつじと黒ひつじのいちにち


※短編としてお読みいただくことができますが、「」もご覧いただくとより楽しめる作品となっています。



「すてきなおうちになったね!」


白ひつじは、黒ひつじにいいました。

家を建てるために一生懸命はたらいた黒ひつじは

つかれた表情を見せずに、


「ふたりで作りあげた家さ。 そりゃ、居心地いいだろうよ」


白ひつじを愛おしげにみます。

そんなこともしらず、

大はしゃぎの白ひつじはとなりに流れる川であそんでいます。


「ここでずっといっしょに過ごすのね!」


ぱしゃぱしゃと水を散らしながら、飛びはねます。


白ひつじと黒ひつじのおうちはやっと完成したのです。



晩は、草をおなかいっぱいたべ ふたり寄り添ってねむります。


「あしたも、あさっても、黒ひつじさんとたのしい時間を

 送れるなんてしあわせ…」


寝言のようにいいます。

黒ひつじはそんなささいな言葉にもうれしく思いました。



ひとつひとつ、おうちをにぎやかにしていきました。

棚や草をいれる樽をつくり、たくさんのお花を育て、

話し合いながら徐々に仕上げていきます。


黒ひつじは不器用なので材料を。

白ひつじは器用なのでもの作りを。


それぞれ分担して、日々を過ごしていきました。



ある日の午後。


「白ひつじ、いってくるよ」


「細い木と、縄になりそうなツタをおねがいね」


「簡単に言うなぁ。 でも、おまえのためなら時間をかけてでも

 質の良いもん持ってくるよ。

 その分、良いもん作ってくれよ」


「はいはい! 暗くならないうちにいきなさいよ!」


こういうやり取りをしては、”いつもどおり”に幸せを感じるのでした。




ずいぶん遠くまで来てしまったようです。

木の枝とツタは見つかりましたが、

あたりは見知らぬ植物だらけになっていました。


「こりゃあ、おそくなって怒られるな」


空を見上げれば、雨雲がおおい 今にも雨が降りそうです。


「草のにおいが雨でわからなくなるまえに、かえるか」


黒ひつじは草のにおいをかぎわけ、おうちのほうへと向かいました。

くんくんと嗅ぐのに夢中になっていたのか、


「おまえもうまそうだな」


横から声がしました。 おおきなくまのからだの影が、

黒ひつじを覆います。

命の危険をかんじ、すぐさま逃げようとしましたが

ほんのかすかに 花のかおりと見知ったにおいがします。


動けずにいると、

くまが腕をふりかざし黒ひつじの足をすくいました。

ひどい傷を負わされたものの、痛みをこらえて全力で走ります。

よく知っている森だからこそすぐに逃げきることができました。


足を引きずりながら、おもいます。


いやな予感がする はやくかえらねぇと



おうちが近くなってきたころ、ぽつぽつと雨が降ってきました。

歩くたびに足の傷が痛みます。


草をかきわけ、ようやく我が家に着くことができました。


「な、なんだ!?」


朝にはいつもどおりだったおうちが、ぼろぼろに壊されています。

お花も踏みつけられ、見る影もありません。

白ひつじの作ったものも、あたりに散乱していました。


白ひつじは、いつも黒ひつじのかえりを待っていました。


「白ひつじ!」


つぶれかけた家のなかを探します。


なかは、板や草がごちゃごちゃになってひどい有様です。


そんなことはどうでもいいとばかりに、

それらをよけて白ひつじを探します。


どこかで下敷きになっているかもしれない


そんな思いにすがりたかったのかもしれません。


板をどけたそこには、白ひつじの角が落ちていました。



白ひつじはちょっと欠けた角を気にして、

不機嫌になるときがありました。

それを黒ひつじは、


「親にもらったものを、そんな不幸におもうなよ」


となだめるのでした。



ここにあるのは、少し欠けてしまった角。

黒ひつじはそっと、やさしく手で包み込みました。




「おはよう、白ひつじ」


こうやって黒ひつじの一日がはじまります。

きれいなお花を摘み取って、

棚においてある角のまわりを飾りたてました。


「きょうもきれいだ」


味をしめたくまがまた襲いにくるかもしれない

それでも、白ひつじがねむるこの家を

死ぬまでまもりつづけたい


「さて、きょうは気分転換にお散歩でもしようかな。 

 行ってくるよ」


不自由な片足を引きずりながら、おうちをあとにしました。


道中、

ちょっと臆病などうぶつと出会うのですが

それはまたべつのおはなしで…


黒ひつじは今日もげんきに過ごしています。




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