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  • 執筆者の写真卯之 はな

ぺんぎんの星


※短編で楽しめる作品となっていますが、ある同一のキャラクターが登場しています。



どうぶつ園にはたくさんのいきものが生活をしています。

ひとが近くでめったにみられない とら や くま も

このどうぶつ園にはいます。


子どもはきらきらした目でどうぶつをみて、

おとなはそんなすがたをよろこんでみています。


それぞれのどうぶつは、ほこらしくもありました。


一角に、プールがついたちょっとぜいたくな場所があります。

そのなかにはながく住んでいるお年寄りのぺんぎんと、

幼いぺんぎんたちが過ごしていました。

最近、一羽一羽ちがうところから若い子がどうぶつ園にやってきて、

集められました。



これは、そんなぺんぎんたちのおはなしです。



とても天気のよい日。

夏なのでとてもあつく、昼間はとくに日差しがつよくなります。


「やっぱりほかのどうぶつたちもへたばってるね」


「そりゃそうさ。 夏は、ずっと外にいるわけにはいかんよ」


一番年をとったぺんぎんが答えます。

何度夏をすごしてきたかわからないほど、長生きのぺんぎんでした。


こかげにいるその二羽は、柵をこえたさきにいるあらいぐまが、

からだをだらんとさせて横たわっている様子がみえました。


水浴びをしていたぺんぎんは、いいます。


「この水温じゃ、のぼせちゃう!」


すぐにプールからあがって、ほかのぺんぎんとおなじように

かげで日差しからからだをまもりました。


そこで、おしゃべりをします。


「日が沈んでからはいりなよ」

「でも、からだが乾いちゃう」

「そういえば、室内にいたカワウソさん見かけなくなったね」

「毎日きもちよさそうに泳いでいたけど…」


ぺんぎんたちは、空になっているカワウソのへやに目をやりました。

きれいに掃除をされていて、なんだかさっぷうけいです。


「おはなしする機会はなかったけれど、さみしいものね」


おひさまがかおを見せなくなるまで、

にんげんが作ったどうくつのなかで過ごしました。




待ちに待った夜がきました。

ぺんぎんたちはプールにとびこみます。


「昼間よりはましだな」

「きもちいい!」


それぞれ自由におよぎます。

ほんとうは、じぶんたちを見にきたにんげんたちをよろこばせようと

動いてみせたいのですが、あの暑さではどうしようもできません。


そんなぺんぎんたちのことをほほえましく見守る、

ひ弱な一羽がいました。

水をかけあったり遊んでいる子たちの会話がきこえてきます。


「こうやってはしゃぐ姿、みせてあげたいのにね」

「季節がかわって、過ごしやすくなったら大サービスしよう!」

「そうだね! また来てくれるといいなぁ」


泳ぎまわりながら、秋になるのを想像して

こころおどらせているぺんぎんをよそに、

お年寄りのぺんぎんと、ひ弱なぺんぎんがおはなしをしていました。


「みんなあんなにはしゃいで…こっちまで楽しくなっちゃいますね」

「おまえさんも、すこしは運動したほうがよいじゃろ。

 最近はめっきりうごかなくなってしもうて」


ひ弱なぺんぎんは、ちょっとしょんぼりしました。

けれど、すぐに笑顔をみせて言います。


「焼き鳥になるのはごめんですよ」


それに…、とつづけてちょっとかしこまりながら、

お年寄りのぺんぎんにあるおはなしをしたのでした。




次の日。

みんなが大騒ぎしています。

ひ弱なぺんぎんがこの柵のなかからみつからないのです。


「きのうはあんなにこにこしていたのに」

「どこかケガでもして、飼育員さんのおせわになっているのかな」


ざわざわしているぺんぎんたちに、一羽の鳥がやってきて

声をかけました。


「なんだい。 こんなに暑い日に、みんなでわたわたして」


柵にとまった鳥は、よくあそびにくる野生の鳥でした。

きれいな水色の羽をもっている派手なとりです。

外のせかいのことをたくさんおはなししてくれて、

ぺんぎんたちはそんな鳥のことがだいすきです。


「やぁ、とりさん。 じつは…」


と、説明をしました。


「いつもどうくつにいるあの子かぁ」


「いまごろどうしているんだろう」


みんながはなしこんでいるのをよそに、

鳥はなにかを察してお年寄りのぺんぎんをみました。

めくばせをしたあとに、柵からおります。


「どこにいったのか、みんなしらないようだな」


「あの子に、


 ほかのぺんぎんたちにさみしい思いをしてほしくないから

 だまっておいてほしい


 といわれたからのぅ…」


「でも、いきものはいつか星になるんだぜ」


「そのときは、わしの番でよーくおしえる。

 まだあの子たちには早すぎるのでな」


鳥は、そっか とまた柵のうえにのりました。

ぺんぎんたちはおしゃべりをやめて、鳥に問いかけます。


「鳥さんは、あの子の居場所わからないよね?」


「しってるよ」


子どものぺんぎんたち以上に、

お年寄りのぺんぎんがおどろきました。


「え!? どこどこ!」


「きみたちにはだまっていたけど…じつはぺんぎんって

 オレみたいに飛べるんだぜ。 

 ほら、似たつばさがあるだろ?」


そうなの!?と、子どもたちがさわぎます。

それぞれぱたぱたと手をうごかしました。

鳥は水色にかがやく羽をおなじく羽ばたかせ、つづきをはなします。


「たぶん、このどうぶつ園をこっそり抜けだして

 いままで知らなかった空とか海とか

 この世界を夢中になってとびまわっているだろうよ」


「へぇ! いいなぁ!」

「ぼくも飛べるようになるの?」

「練習したら、いけるかな!」


子どもたちは口々に鳥に質問を投げかけました。


「もうちょっと、おとなになってからだな」


鳥は、お年寄りにいたずらなかおをしたあと

大空へととんでいきました。

一羽のぺんぎんが、お年寄りのぺんぎんにたずねます。


「ねぇ、おじいちゃん。

 おじいちゃんも昔とべたの?」


すこし間があいて、返事がかえってきました。


「これから星がつかめるくらい、とべるようになるさね」


お年寄りのぺんぎんは、ふぉふぉふぉと笑いました。



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