その日のよるは、おおあらしがやってきました。
森の木はたおれ、川の水はあふれだしました。
その川におうちを作っていたカモノハシの親子は流されて、
おたがいに はなればなれになってしまいました。
あらしが去った次の日。
カモノハシの子どもは、川辺で目をさましました。
まわりを見渡すと、そこは見知らぬ森が広がっています。
「おかあさん…」
途方にくれたカモノハシでしたが、
勇気をふりしぼりなんとか立ち直って、
森のなかへと入っていきました。
きのうのあらしで、森はだいぶあれていました。
ですが、雲ひとつもない空とげんきな太陽のおかげで
こわい気持ちがはれました。
カモノハシは、通りかかったくまに声をかけます。
「くまさん、くまさん。 ぼくのおうちを知ってる?」
「きみは見かけたことないなぁ」
カモノハシは次に、通りかかったしかに声をかけました。
「ねぇ、しかさん。 ぼくのこと、知ってる?」
「ごめんね。 会ったことないわ」
カモノハシのおうちを知るどうぶつは、だれもいませんでした。
足がはやくて、のせてもらえそうなどうぶつには、
「よければ、どこかの川につれて行ってもらえませんか?」
と聞いても、じぶんのことでせいいっぱいのどうぶつたちは、
いそがしい の一言がかえってくるだけで
乗せてもらえませんでした。
一日いっぱい歩きましたが、
カモノハシのおかあさんも見つけることはできませんでした。
けれど、歩いているあいだにカモノハシは、
良いアイディアがひらめいたのです。
「そうだ! こっちから探してだめなら、見つけてもらおう!」
カモノハシはさっそく行動にうつりました。
雨とかぜがひどかったせいで、
木から落ちたたくさんのどんぐりがあります。
それをあつめにあつめ、葉っぱのじゅうたんにならべました。
「みなさーん! どんぐりはいかがですかー!」
カモノハシのお店の開店です。
朝早くに、まるまるとしたどんぐりをあつめにまわります。
りすの間で大人気になりました。
いそがしいおかあさんりすや、
おしごとで手いっぱいなおとうさんりす…
きょうはちいさな小鳥がお店にやってきました。
「いつもお世話になっているカケスさんに、
おくりものをしたいの」
「それじゃあ、こうしよう!」
りすはその場に生えている葉っぱでどんぐりをつつみ、
ピンクのお花できゅっと結びました。
「わぁ! すごくすてきよ! ありがとう、カモノハシさん!」
「あの約束、わすれないでねー!」
「もちろんだよ!」
そういって、小鳥はプレゼントをくちばしで大事そうに持ち、
とんでいきます。
そうしているうちに、
遠くに住むおくりものをしたいどうぶつたちも、
たまにやってくるようになりました。
お店は、カモノハシが毎日どんぐりをお店にならべるおかげで、
森のどうぶつたちの生活が楽になりました。
みんなにかんしゃされ、カモノハシ自身もよろこびました。
雨の日も、
これがいまぼくができる、せいいっぱいのことだから
そう、じぶんに言い聞かせ、さいごの一粒をかごにいれます。
かごがいっぱいになったので、
そろそろお店を開こうと思ったときでした。
「やっぱり、無事だったのね!」
うしろからつよく抱きしめられました。
カモノハシはとてもなつかしい香りを感じて、
「おかあさん! やっと会えたね!」
向きなおり、ひさしぶりのおかあさんを見てぱっと笑顔になります。
「あなたのうさわは、どうぶつたちを伝って聞こえてきたわ。
それも遠くまで」
「そうだよ、おかあさん。
どんぐりをくばるかわりに、伝言をたのんだんだ!
どんなにはなれていても、いつか届くと信じて」
「よくがんばったね!」
カモノハシのおかあさんは、なでながら何度もほめました。
それから。
お店は品数をふやし、げんきなカモノハシとおかあさんで
お店をきりもりしています。
まちあわせの約束をつたえたり、
迷子のどうぶつのおしらせをしたり…
親子はどうぶつたちの伝言役として、だいかつやくしているのです。
Yorumlar