わたしの家は、やさいやお米をそだてる農家でした。
家から一歩足をふみだせば、草のかおりがします。
そのにおいに包まれながら、
お兄ちゃんといっしょに暮らしていました。
わたしが小さかったころ、雨の日は
ふたりでびしょぬれになりながら
畑であそびました。
わたしが小学校にかようようになったころ。
ぐずりだすわたしを
いつもの笑顔で見送ってくれました。
お母さんとけんかして家をとびだしたときも、
やさしくなぐさめてくれました。
すぐにお母さんに見つかって、
ばつが悪くなったのを思い出します。
お兄ちゃんとは、いろいろな思い出がありました。
楽しかったときも、辛かったときも、見守っていてくれました。
わたしは、車に荷物をつめおわり外の景色をながめました。
この家と、あの香りとは、しばらくお別れです。
畑をみると、家を出るときに見送ってくれた
いつもと変わらない笑顔がありました。
わたしはカカシの斜めにずれた帽子をそっと直していいました。
「ありがとう、わたしのカカシさん。
このおうちのみんなと畑をこれからも見守ってあげてね」
ワラでできた からだをぎゅっと抱きしめました。
そのからだは、とても心地のいい匂いがして
胸いっぱいにすいこみました。
わたしはこの香りを、ずっと忘れない…

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