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いっぽんあし

  • 執筆者の写真: 卯之 はな
    卯之 はな
  • 2019年12月11日
  • 読了時間: 1分

わたしの家は、やさいやお米をそだてる農家でした。


家から一歩足をふみだせば、草のかおりがします。


そのにおいに包まれながら、

お兄ちゃんといっしょに暮らしていました。


わたしが小さかったころ、雨の日は

ふたりでびしょぬれになりながら

畑であそびました。


わたしが小学校にかようようになったころ。

ぐずりだすわたしを

いつもの笑顔で見送ってくれました。


お母さんとけんかして家をとびだしたときも、

やさしくなぐさめてくれました。

すぐにお母さんに見つかって、

ばつが悪くなったのを思い出します。


お兄ちゃんとは、いろいろな思い出がありました。


楽しかったときも、辛かったときも、見守っていてくれました。




わたしは、車に荷物をつめおわり外の景色をながめました。

この家と、あの香りとは、しばらくお別れです。


畑をみると、家を出るときに見送ってくれた

いつもと変わらない笑顔がありました。


わたしはカカシの斜めにずれた帽子をそっと直していいました。


「ありがとう、わたしのカカシさん。

 このおうちのみんなと畑をこれからも見守ってあげてね」


ワラでできた からだをぎゅっと抱きしめました。

そのからだは、とても心地のいい匂いがして

胸いっぱいにすいこみました。


わたしはこの香りを、ずっと忘れない…


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