ある森に とてもかわいい子うさぎがいました。
おでかけするときには 首にはしろいリボン あたまにはあかいずきん。
しっぽにはシロツメグサのかざり
きょうも 身支度をして おさんぽに出かけました。
ことりが子うさぎにはなしかけてきました。
「あら 子うさぎさん。 きょうもとってもおしゃれね!」
「ありがとう ことりさん。
きょうはなんのお花にしようか迷っちゃった」
「わたしもあなたのようになりたいなぁ…」
「なれるわよ! ことりさんのすてきな水色のはねに、
このシロツメグサをくくるだけで… ほら! とてもお似合い」
じぶんのしっぽをかざっていたお花を、ことりの尾ばねにむすびました。
ことりはきらきらしたかおで、
「子うさぎさん ありがとう!」
子うさぎのまわりをうれしげにくるくるとまわり、
大空へとびたっていきました。
おさんぽをつづけていると つぎは森のくまに出くわしました。
「お 子うさぎか! あいかわらず、かわいいな」
くまは大きなからだでしたので、
子うさぎは見あげるかたちでおはなしします。
「ありがとう、くまさん。 そういえば、家にあるはちみつを
全部使っちゃって。 よければまた、もらえるかな?」
「おやすいごようさ!
かわいい子うさぎのためなら、
とびきりあまいはちみつをわけてあげるぜ」
子うさぎは にっこりとわらうと その場をあとにしました。
途中で きれいなおはなを見つけたので
3本おうちに持ちかえることにしました。
真っ赤なおはなは、子うさぎがもつだけでまわりがぱっと明るくなります。
おうちにかざるか 新しくしっぽにつけるか
迷いながらおうちをめざします。
「んー どちらのほうがいいかな」
考えこみながら歩いていると
一匹のうさぎが ふさぎこんでいるのがみえました。
近づくとすすり泣いているのがわかります。
子うさぎは思わず はなしかけました。
「どうしたの? こんなところで泣いて」
うさぎはかおをあげ きらきらした子うさぎを見るやいなや
こんどはおおきな声をあげて泣きました。
「あなたにはわからないわ」
「はなしてくれないと、わたしにはわからないよ?」
ひっくひっくとすこし落ち着いてくると、
ふるえる声でうさぎがかたりました。
「おんなのこたちが、仲間にいれてくれないの。
ざっくばらんな毛なみ、ちいさい耳…
ほかのうさぎと違うから、一緒にあそんでもくれない」
目いっぱいになみだをためて、ことばひとつひとつゆっくり言いました。
「子うさぎさんのような きれいな子には わからない」
「とんでもない!」
あまりのこえのおおきさに うさぎは目をまるくしました。
子うさぎは、じぶんのつけていたずきん りぼん つぎつぎとはずし
素っ気ない ただの子うさぎになりました。
そして うさぎはあることに気がつきました。
ずきんのない子うさぎは、うさぎとおなじく
ちいさなみみをしていたからです。
「あなたとわたし、そう変わらないんだよ」
やさしい声で言いきかせ、ずきんをうさぎにかぶせました。
”おおきなみみ”をもらったうさぎは、
だんだんとえがおをとり戻していきます。
「わたしたちおんなの子しかない もふもふな首まわりは
大きめなりぼんで隠しちゃおう」
まっしろなりぼん まっかなずきん。
その姿はまるで、いつものおしゃれな子うさぎのようになりました。
ちかくの水たまりを鏡にしていまのじぶんを映すと
うさぎはよろこびました。
子うさぎにぎゅーっとだきつくと、
「ありがとう。 あなたは完璧だとおもっていて…
さいしょ、あんなこといってごめんなさい。
子うさぎさんは、じぶんでなにができるか考えて、努力をしていたのね」
つけてくれたりぼんをはずそうとした手に、
子うさぎはそっと手をかさねます。
「たくさんつくってあるの。 よかったらこれをもとに 作ってみて」
「あ、ありがとう…!」
別れぎわに、まんめんの笑みをしたうさぎは
からだに華やかなかざりがなくても
とびっきりかわいくてすてきな女の子でした。
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