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執筆者の写真卯之 はな

稲とすすき 秋の夜長


「ススキさんはいいなぁ。 ふさふさしていて、とってもきれい」


「そんなことないよ。 稲くんと、なんら変わりない」


実をつけた稲と、ふさふさな毛をもつススキは

毎日おしゃべりを楽しんでいる仲です。


嵐がくる日も。

「きょうは、すごいかぜだねススキさん」

「稲くん、せっかくの実が落ちてしまうね…だいじょうぶ?」

「大丈夫! おじいさんが手入れして強い稲に育ててくれたから」


天気が良い日も。

「げーこげこ。 ススキさん、見てよ!」

「かえるだね! 気持ちよさそうに田んぼを泳いでる」

「たくさんいて、くすぐったいや」


季節をかんじながら、どちらも成長していきました。

ところが、だんだんと稲がうつむくようになりました。


ススキが聞きます。


「稲くん、最近調子がわるいの?」

「ううん、ちがうんだ。 ほら、ぼくのからだについている実が

 大きくなってきたから、腰がまがっちゃうんだよ」

「それは大変そう」

「ススキさんはまっすぐにお日様をあびられて、うらやましい」


稲は、ススキの顔さえも見れなくなってきてさみしく思いました。

それでも、おしゃべりはできるので充実した日々でした。


10月にはいると、植物は衣替えをはじめます。

緑から、黄色や赤に。


稲と、ススキは、おなじ黄金色にかがやいていました。


ススキの毛がふさふさと、

稲の実がゆらゆらと、


なまえは違えど、似たもの同士でした。


「稲くん、立派に育ったね」

「もうそろそろ、刈りどきってやつかな」

「いたそうだなぁ…」

「でも、ぼくはいろんな国にいったり、

 いろんな料理に使われたりするみたいだ」

「すごいね! ぼくも美味しい実をつけられたらなぁ」

「ススキさんのふさふさ、よくひとに触ってもらえて、

 ぼくはうらやましかったんだよ」

「きみがカエルでくすぐったかったように、

 ぼくもあれはくすぐったいんだよ」


二本はけたけたと笑っていました。




黄金にかがやいていた畑は、のっぺらぼうになってしまいました。

ススキはふさふさと揺れています。


「ぼくは、作付けの時期だよ。 稲くん」


ふわっと綿毛が舞いました。

秋のかぜに運ばれて、

それはあなたの街にもこっそりおじゃましているかもしれません。


秋になったら、きっと気づくかも…


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