自己紹介するよ! ぼくはガラスのコップ。
とある かぞくの女の子にずーっと使われているコップなんだ。
女の子がすきなキャラクターの絵がかいてあって、
ぼくも気にいっている。
暑い夏には、おかあさんが作ったむぎ茶をそそがれる。
寒い冬には、女の子があったかいお茶をいれようとしたけど、
すぐにおとうさんに注意されて ほっとした。
ガラスに熱いのみものをいれちゃあ だめだからね。
暑い日々がつづくと、ぼくが活やくするときが多くなる。
すごくうれしかった。
でも暑くて女の子がたおれないか、ひやひやしたよ。
冬がきて、女の子がべんきょうする機会がふえたんだ。
そして、夜中にはおかあさんがぼくにジュースをいれて
持っていく。
となりにはおいしそうなケーキ!
一生懸命べんきょうするすがたをみて、ぼくはこっそり応援した。
もう何年もいっしょだった。
やわらかいスポンジでからだを洗ってくれて、
乾かされたとおもったらすぐに女の子がぼくをつかう。
いろんな色の飲みものをいれられて、
ふくを着替えさせてもらっているようでたのしかった。
ある日、女の子がぼくを落としてしまった。
「よかった、無事で」
女の子はあんしんしていたけれど…
ぼくからだのちいさなひびに気づかず、のみものをそそいだ。
こわれたグラスやお皿は何度かみたことがあった。
ちらばったぼくらを、おかあさんはつまんで新聞紙にくるんだ。
そのあとのことは、よくわからないけど、
もうかぞくとは会えないことをぼくは知っていた。
けがしたぼくに気づかない女の子はいつもどおり使う。
グラスのふちにひびがあるから、
女の子が口を切ってしまわないかこわかった。
このままじゃ、けがをさせてしまう!
きょうもきれいに、やさしく、ぼくを洗ってくれたおかあさん。
そのあとに水気をきる場所におこうとしたけど、
おかあさんの手をすべって、床におちてみせた。
がっしゃーん
そのとき、女の子が音にびっくりしたのか、とんでやってきた。
ばらばらになったからだをみて、
「ずっと使ってたコップなのに…」
とてもかなしいかおをして、ひとつひとつ破片をあつめはじめた。
おかあさんに ガラスはあぶないから と言いわれても、
女の子はていねいに全部あつめた。
けどやっぱりコップは、新聞紙にくるまれてごみの日にだされた。
ぼくの破片はどこにいったかわからないけれど、
ぼくの欠片はいごこちの良いやわらかな袋に女の子はいれてくれた。
どこでもいっしょだったし、
いろんなばしょにつれて行ってくれたんだ。
そして、きょうはだいじな日。
ぼくはこの日まで、ずっと祈っていた。
女の子がぼくが入ったふくろをぎゅっとにぎりしめてつぶやいた。
「合格できますように」
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